文字のデザイン・書体のフシギ

 最近は企画っぽいことやる事が多くなってきてるんですが、そういう事やるんなら考える癖を付けなきゃなあ、という事で、本を積極的に読もうと決意しました。今後本を読む時は備忘録として、こうやってblog上に読んだ本をまとめていきたいなあと思ってます。booksカテゴリも作ったし。

 さて、早速。

 『文字のデザイン・書体のフシギ』 左右社

 表紙に、『神戸芸術工科大学レクチャーブックス』と書いてある通り、大学の特別講義(主に1年生対象)でゲストの方が話した内容を本にまとめてあるようです。なのでものすごく読みやすい。後述しますが、一番目に祖父江さんが来ているからさらにとっつきやすい。
 まだそんなに文字を追うことに慣れていない(こんなんじゃまずいとは常々思っているんですが)自分にとって、改めて本に触れるきっかけになるものとして非常に良かったと思います。

 で、内容の方。この本は、タイトルにもある通り「文字」が中心のテーマとなり、それに関わる4人のゲストがそれぞれ講義を展開しています。ゲストは、祖父江慎さん、藤田重信さん、加島卓さん、鈴木広光さんです。

 その4篇、少しづつ内容を書いていきます。

 祖父江さんの項。まず自身の仕事(ブックデザイン)の説明から入り、「文字はこういうふうにも扱えるんだよ」というようなことを見せてから、文字の細かな形、今日の明朝体(かな)の簡単な成り立ちの話、と掘り下げて行ってます。
 で、その語り口調がすごく軽い。1行目にいきなり『それじゃあ、スタートしますお。よいしょ。』とか書いてある。2倍サイズの文字で。この2倍サイズの文字は祖父江さんの項に限って登場し、強調したい部分がこれになってます。ハリーポッターの版面みたいで良いです。
 内容は、丁度今ウチのグラフィック研の人たちに参考にすぐ参考になるようなものが満載です。すぐにアイデアが欲しい時に引き出しを開ける鍵になりそうです。グラフィックに凝っているけど、文字へのこだわりはあんまりないよ、という人には是非薦めたい感じです。

 藤田さんの項。前の祖父江さんからさらに掘り下げる形になって、現在使われている書体のかたちとそこから受ける印象等を解説しています。後半になってくると文字のエレメントにまで解説が及んでくるので、この辺は興味のある人じゃないとツライと思います。が、僕は書体フリークになりつつあるので楽しく読めました。
 注意点(?)として、藤田さんは筑紫書体のデザインをした方なので、当然ながら筑紫書体を中心に解説がされている、ということを書いておきます。それから、比較対象が割と古めのデジタルフォントが多いので、最近の書体(特に游明朝とか)との比較とか、その解説がないです。その辺欲しいな、と思いました。発行が2008年5月ということなので、無理だったかもしれませんけど。

 加島さんの項。藤田さんの項を読んで、じゃあ一体何が美しいと言えるの?とかなったところで、この『デザインを語ることは出来るのか』という内容の講義、という「転」開。と、狙ってやったのかどうかは知りませんが、ここで内容がちょっと変わります。デザインそのものについて、マクロな視点から見てます。
 まず「良いデザインって、説明できる?」というような疑問を提起し、デザイン系雑誌の変遷を追っていきます。その変遷の中から、『デザインが語られ始めたとき』と、『デザインは語れないと語られ始めたとき』とを抜き出して、あれやこれやと例を出してます。
 邪推ですが、文字に限れば、『語れない』けど良いものが前述の筑紫書体、『語れる』という前提で作られているのが今日ブームのユニバーサルデザイン書体なのかなあとか思ったりしました。深い意味はないですが。

 鈴木さんの項。古来の筆文字から、いかにして今の組版のシステムが出来たか、という、組版黎明期のシステム構築について書かれています。日本語組版の特徴として、「かな」の存在が挙げられますが、かなは、明治時代に教育のために一文字一文字分けて考えられるまでは、連綿と言って、繋げて書かれるのが普通でした。その連綿した文字を、いかにして組版のシステムに落とし込んだか、ということが講義全体を使って説明されています。
 個人的に思ったのは、明治時代以前、連綿したかなを用いていた時代の日本語って、ずいぶんと適当…、いや、自由だったんだなあ、ということ。これまで変体仮名という名前自体は知っていましたが、使い分けが『版面の美しさやバランス、気分などで使い分け』るというのは…(書道やってたんなら知っとけって言う話ですが。でも楷書しかやってないよ)。その変体仮名の話も含めて、日本語は昔から行間を読む言語だったんじゃないかなあ、とか思ったりしました。

 と、こんな感じでした。全体的にお前の専攻は違うだろとか言われそうですが、興味があるんで仕方ナシ。昔から絵を描いても止まらなければ、字を書いても紙の前にずっといるような人間でした(決して、「文章を書いても」じゃないところがポイント)。そういう人間が読むとかなり満足できる本でした。
 ウチの大学、特にグラフィック研の人は読んどいて損はないんじゃないか、とか。

One Comment to “文字のデザイン・書体のフシギ”

  1. [...] This post was mentioned on Twitter by hidenori watanave and hidenori watanave, takaD . takaD said: blog更新しました>文字のデザイン・書体のフシギ : http://bit.ly/8DP1IO 読んだ本の備忘録はじめました。 [...]


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